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【感想】アナログ:ビートたけし著【小説】

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『アナログ』ビートたけし著。

母から「読んでみる?」と渡された本のなかの一冊を読了。

 

 

アナログ

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アナログ

ビートたけしさんの作品を読むのはこれがはじめて。

手にとって最初に思ったのは、小説の著者としては「北野武」名義じゃないんだな、ということでした。

てっきり、芸人としてメディアに登場するとき以外は、監督作品のように北野武名義でやっておられるのかと思っていました。

 

さて、この小説の主人公は、便利なスマホやPCなどがあまり好きではない性格の男性。

周囲からは時代遅れだと言われつつも、建築に関わるデザインを一貫してアナログな方法でこなす毎日を送っています。

ある日、一人の女性と喫茶店で出会い、切っ掛けがあって少し親しくなります。

ここで、この女性もスマホなどがあまり好きではないことがわかり、連絡を取り合うのではなく、毎週木曜日に、お互いに気が向いたらまた、このお店でご一緒しましょう、という口約束をします。

アナログな付き合いがはじまるわけですね。

 

昨今では「もう昔のようなトレンディドラマは撮れない」といわれているようです。

 

待ち合わせに相手が来ない、なにかあったんだろうか、でも連絡をとる手段がない。

探しに行こうか、でもここを離れている間に相手が来てしまったらどうしよう。

 

そういったすれ違いによって起きるドラマを、描けなくなったというのです。

なにか困ったことが起きたとしても「スマホがあるじゃん」と、視聴者が違和感を感じてしまうわけですね。

確かに便利にはなりましたが、便利すぎることで生まれる不自由というものも、確かにあるようです。

 

会えない時間が想いを育てる、といったようなことも、表現しにくくなったでしょうね。

昔は個人が電話を持っておらず、意中の相手の家に電話をかけると親が出て、なにか気まずい思いをするため、結局怖気づいてなかなか連絡がとれない、というのが一般的な環境でした。

いまでは逆に、他人との距離感を含め、不必要に近くなりすぎているところがあるようにも思えます。

 

そういった現在の状況に対し、ある意味では疑問を呈するような切り口で、この小説は書かれています。

そして連絡を取り合わない「アナログ」な関係を、上手くシナリオのギミックに使用していました。

 

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メールやLINEで連絡を密に取り合うことが、本当にお互いを理解することに繋がるでしょうか。

近づくほどに、一方的な思いをぶつけて衝突したり、多くの言葉を重ねて食い違い、関係がこじれてしまったりすることも、あるのかもしれません。

密に連絡を取り合っているから、と相手のことをすべて理解した気になっているようでは、うまくはいかないことも、なんとなく想像できます。

 

たとえば、メールでは些細な言いまわしが誤解を招き、喧嘩になることもあります。

しかし、手紙でならどうでしょう。

手紙は、相手への気持ちをこめ、言葉を吟味して書くものです。

受け取った相手は、手紙をくれた相手のことを想像し、同じようにして返事を書きます。

時間的な余白があるために、相手のことを想像する余地が充分にある、ということです。

そういった相手との適度な距離を生む「余白」が、想像力を生み、相手に対する愛情を深めるものだと思います。

 

私も、2003年からずっと「定期便」と称して、月のはじめにイラストを添えたメールを、希望する友人たちに送り続けてきました。

メールではありますが、次の月になるまでは基本的に返信をしないため、手紙によるやり取りの「余白」と似通っています。

それでも一人、また一人、と次第に返信がなくなり、この20年弱の間に、ずいぶんと「定期便」を送る相手が減ってしまいました。

メール自体が、アナログな手紙と同様に、過去のものとなりつつあります。

みな、便利なほうに流れていくものですから、単純に面倒になったという人もいるでしょう。

 

観光スポットが家の近所だと「いつでも行けるから」と、結局地元の人は行かなかったりしますよね。

それと同じで「いつでも連絡とれるから」と言っているうちに、気づかず疎遠になってしまう。

そしていざ、連絡がとれなくなってから「もっと連絡をとっておけばよかった」などと思ったりするわけです。勝手なものですね。

 

小説『アナログ』には、ほかにもビートたけしさんらしい要素がたくさん盛りこまれていましたね。

落語やクラシック音楽に関する知識もふんだんに。

男友達との下世話なやり取りや、馬鹿話の応報など、いかにもといった感じでした。

私はその手のノリがあまり好きではありませんが、随所に用意されたそれらの要素によって、読み手が軽く読み進められるような構成になっているようにも感じました。

 

物語ラストは『アナログ』だからこそ、そこに落ち着いた、ともいえる結末でした。

デジタルなコミュニケーションが悪いわけではありません。

便利すぎることによって、見落としていることがないか、問いかけられているようでもありましたね。

 

どんなに言葉をかわしても、通じ合わない相手はいるものです。

逆に、言葉をほとんどかわさずとも、通じ合うことはできる。

この物語には、そんなささやかなメッセージがこめられているような気がします。

 

 

それでは今回はこのへんで!

最後まで読んでくださってありがとうございます(´ω`)

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